久能山東照宮博物館　展示

12月27日（土）〜2009年2月27日（金）
最後の将軍徳川慶喜〜その人と時代〜

　最後の将軍徳川慶喜は、天保８年（1837）９月、御三家の水戸徳川家当主徳川斉昭の子として、江戸小石川の水戸藩上屋敷に誕生しました。この年２月には大塩平八郎の乱が勃発し、６月には江戸湾に進入しようとしたアメリカ船が、異国船打払令によって砲撃を受けた事件（モリソン号事件）が発生するなど、世情はまさに内憂外患の到来を予感させる事件があいついでいました。

　父斉昭の方針で、幼少から水戸の弘道館で厳しい教育を受けた慶喜は、弘化４年（1847）、11才で御三卿一橋家の養子となり、幼くして将軍候補者の一人となります。事実、幕政改革を目指す徳川一門・外様大名の一部は、慶喜を13代将軍徳川家定の後継者に据えようと、運動を繰り広げていきました。結局、家定の後継者には紀州藩主の徳川慶福（家茂）がなりますが、慶喜は文久２年（1862）に将軍家茂の後見職に就任し、家茂を助けて朝廷と幕府の融和に奔走するなど、混迷の度を深める幕末政局の中心人物として活躍していきました。

　家茂が死去すると、慶喜はついに将軍に就任します。これまでの徳川将軍とは違い、京都で政務を執ったことが、慶喜の政治の大きな特色でした。幼い頃から水戸藩の尊皇思想を身につけていた慶喜にとって、朝廷は絶対的な存在でした。それゆえに朝廷を中心とした新政権の成立を模索し、大政奉還を決断し得たともいえるでしょう。
戊辰戦争期、徳川家は存亡の危機に立たされます。この時、慶喜は天皇中心の新政府に恭順を示し続け、いっさい反発することなく謹慎生活を送っていきました。静岡で隠棲すること30年弱、慶喜は明治の半ばを過ぎた東京へと再び足を踏み入れます。明治天皇と皇后に拝謁した慶喜は、明治35年（1902）に公爵を授けられ、名実ともに名誉回復を果たしました。本展を通じて、激動の幕末・明治を生きぬき、さらには天皇・皇室との関わりに重きをおいていた慶喜の姿に思いを馳せていただければ幸です。

平成20年12月