日光山輪王寺宝物殿　展示

2010年6月12日（木）〜2010年10月5日（火)
徳川将軍家と能

　日本の代表的な古典芸能である能は、室町幕府以来、武家の擁護を受けて発展してきました。特に江戸時代になると、能は「式楽」（公儀の儀式に用いる音楽・舞踊）とされ、幕府の年中行事・儀礼に欠かせない武家の教養として、他の芸能の中でもとりわけ重要な位置を占めていきます。

　江戸幕府初代将軍家康は、人質として今川氏に預けられていた頃から能に親しみ、観世十郎大夫から稽古を受けたとされています。家康は永禄年間（1558〜70）になると、年頭に能の謡をうたう謡(うたい)初(ぞめ)を行い、以後、謡初は年中行事となりました。また、慶長8年（1603）に家康が将軍に任じられた際、将軍宣下能が催され、この祝賀能は14代家茂まで代々行われることとなります。

　家康以降、歴代将軍は幼少から能の稽古を受け、自ら能を舞いました。特に5代綱吉は数多くの稀曲を復活し、公家衆饗応能といった公式な場でも自身で能を舞うほど好んだとして有名です。また、能の記録の整備に着手した8代吉宗、「石橋(しゃっきょう)」を好んで舞った10代家治、観世・宝生の2つの流派を学んだ11代家斉など、将軍家では能が深く親しまれてきました。

　今回の展示では、能を題材にした遺愛品や謡曲かるたなど、将軍家に伝来した品々を展示します。これらを通して、その嗜みの深さと能の優雅さを感じていただけましたら幸いです。