日光山輪王寺宝物殿　展示

2010年12月10日（木)〜2011年2月8日（火）
大奥の教養−かるた

　正月の風物詩として馴染み深い「かるた」は、16世紀の南蛮人来航とともに日本に伝わりました。「かるた」の名は、ポルトガル語のCarta（カード・手紙などの意）に由来しており、伝来後まもなく日本でも天正カルタやウンスンカルタが版行されます。

　また一方で、日本には平安時代より「貝覆(かいおおい)」という遊戯がありました。貝覆は、蛤(はまぐり)の一対が、その一対以外とは合わない特性を利用したもので、貝の表の地紋から対になる半片を見つけて、より多くの一対をこしらえる遊びです。この遊戯は貴族の間で流行し、後には貝に装飾が施され、左右の貝片に和歌の上の句と下の句を分けて書き、それを合わせて取る「歌貝」が作られるようになりました。その後、歌を書くものが貝から紙へと変わり、小倉百人一首かるたのような「歌かるた」が考案されます。

　「歌かるた」は貴人が古歌の教養を嗜むものであり、覚えるべき古典の歌を自由に選んで「かるた」にしたことから、題材や形態は多岐にわたっています。また、上流社会で発展したため、高級な料紙に能筆家の筆を求めたり、装飾和紙や古代裂を施した帙に収めるなど、一種の調度として見なされ、婚礼道具の中にも加えられました。

　大奥では、将軍の御成りがない際は「歌かるた」や香、茶、和歌などをして過ごしたとされており、14代将軍徳川家茂の正室和宮（静寛院宮）の婚礼調度の中にも「伊勢物語かるた」が見られます。

　このほかにも、徳川将軍家には「古今集歌かるた」や「湖月抄かるた」など、多くの「かるた」が残されています。ここに展示する品々を通して、将軍家ゆかりの女性たちの教養の深さを感じていただけましたら幸いです。

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