日光山輪王寺宝物殿　展示

2011年8月12日（金）〜10月5日（水)
16代徳川家達 ― その人と時代 ―

　徳川家達(いえさと)は、御三卿(ごさんきょう)の一つである田安(たやす)徳川家の当主慶頼(よしより)の3男として、文久3年（1863）7月に江戸城内の田安邸で誕生しました。当時の日本はペリー来航以降開国と攘夷に揺れており、雄藩の台頭や尊王攘夷運動、朝幕関係の変化など大きな転換を迎えていました。

　家達は幼名を亀之助といい、慶応元年（1865）2月に3歳で田安家の当主となります。14代将軍家茂には自身の後継に亀之助を据える考えがありましたが未だ幼少のため実現せず、15代将軍には同じ御三卿の一橋(ひとつばし)慶喜が就任しました。しかし、慶喜は慶応3年に大政を奉還し、翌年の鳥羽・伏見の敗戦後には寛永寺において謹慎に入ります。当主不在となった徳川家では天璋院(てんしょういん)（13代将軍家定継室）や静寛院宮(せいかんいんのみや)（14代将軍家茂御台所、和宮）らの尽力があり、亀之助に徳川宗家の相続が認められました。わずか6歳で16代当主となった亀之助は家達と名を改め、新政府の命により駿河府中70万石に封ぜられ、静岡へと移り住みます。

　明治4年（1871）、静岡藩知事であった家達は廃藩置県を受け東京へ戻り、同10年にイギリスへ留学します。英語だけでなくイギリスの政治体制を学んだ家達は、帰国後、公爵に叙せられ、明治36年（1903）に貴族院議長に選任されます。以降、30年もの長きにわたって議長を務め、華族の中心的存在として貴族院と政府間の調整に努めました。その政治手腕が認められ、大正3年（1914）には内閣組閣の大命を受けますが、熟考の上辞退しています。その後、第一次世界大戦後の国際秩序を構築するワシントン会議では全権委員として参加し、平和外交の樹立と日本の国際的地位の改善に尽力しました。

このたび展示する家達自筆の書やゆかりの品を通し、幕府瓦解後、徳川宗家当主という重責を真摯に受け止め、新たな徳川家の確立に努めた家達の姿をご覧いただけますと幸いです。

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