日光山輪王寺宝物殿
日光山輪王寺宝物殿 展示
2012年12月15日(土)~2013年2月13日(水)
德川宗家伝来の品に見る吉祥
幸せになりたい、健康で長生きしたい、豊かになりたい、夫婦仲良く過ごしたい、出世して偉くなりたい、こどもや孫に恵まれたい、平和に暮らしたい……。いつの世も人々の願うことは変わらないのではないでしょうか。そのような人々の願いは、日常を彩る美術品や工芸品にも様々な形で表されています。
「吉祥」とはめでたい兆し・良い前兆のことを指し、縁起がよいとされる動物・植物や器物などを描いた図柄を「吉祥文様」と呼びます。例えば、松・竹・梅の文様がお正月や結婚式などのおめでたい場面でよく用いられること、鶴と亀が長寿の象徴とされることは、よく知られるところでしょう。吉祥のシンボルは、図柄に表されるのみならず、歌に詠まれたり、文字に書かれたりすることもあります。このようなめでたいモチーフを用いることで、自分や家族・友人の幸せを願うのです。
ところで何故、庭木にもなり目にすることの珍しくない松・竹・梅が吉祥とされるのでしょうか。それは中国において、松と竹が冬でも緑を保ち、梅はまだ寒い時期に花を咲かせる姿が、清廉潔白を旨とする文人たちの理想として愛されたことに由来します。それが日本に伝わり、吉祥文様とされるようになりました。
德川宗家に伝来する数々の品にも、吉祥のシンボルが隠されています。単なる花鳥画や水墨画にしか見えない絵画も、実は幸せを願う画題であったり、日用の品にさりげなく施された文様が吉祥文様であったりします。
このたびの德川宗家伝来の作品の展示を通し、様々な吉祥のシンボルと、それを愛で用いた人々の願いに思いを馳せていただけましたら幸いです。
平成24年12月公益財団法人 德川記念財団